ひがやすを技術ブログ

電通国際情報サービスのプログラマ

SpringSourceの買収劇についてそろそろ一言いっておくか

VMwareは8月10日、JavaアプリケーションフレームワークSpring Framework」を提供する米SpringSourceを買収することで合意に達したと発表した。

 買収は現金と株式、ストックオプションで行われ、総額は4億2000万ドルに上る。既にSpringSourceの株主の承認を得ており、2009年第3四半期に完了する見込み。

Congrats Spring Guys.


SpringSourceは、ビジネス規模は拡大(買収繰り返しているからね)していたものの、あまり儲かっていないんじゃないかとうわさされていました。
本当のところはわかりませんが、サポートビジネスは余り成功していなくて、コンサル(講習を含む)がビジネスの中心だったようなので、まぁ本当のことじゃないかと思います。
オープンソースでビジネスを成立させるのは、超難しいので、これは仕方のないことでしょう。うちの会社もオープンソース活動は、社会貢献のひとつだと考えているので、やっていけてますが、ビジネスとして考えたらとてもじゃないけどやっていけません。


これで、VCの厳しい締め付けもなくなり、プロダクトの開発に専念できるので、Springの開発者にとってもユーザーにとっても今回の買収は、良いことだと思います。


VCの厳しい締め付けがなくなったとはいえ、VMwareの一部門として利益を出すことが求められると思うので、今後もいろいろ大変でしょう。
Springが利益を上げるには、コンサルビジネスからサポートビジネスに移行する必要があります。コンサルはたいてい一度で終わりだけど、サポートビジネスは、お客様の案件が続く限り金が入ってくるからね。
サポートビジネスに移行するために、新しいメンテナンスポリシーを発表したわけです。不評をかって大きく改められたけど。
Springは心を改めた - yvsu pron. yas


そろそろ、Spring 3.0のRCが出るはずなので、2.5のメンテナンスは、サポートに入らないと受けられなくなります。これを機に、みんながサポート契約を結ぶようになればSpringの勝ち。あいかわらずサポートを買う人が少なければ、ビジネスとしては苦しいでしょう。
オープンソースとしてプロダクトが成功することとビジネスが成功することはまったく別のことだから。


DIという技術は、もう旬を過ぎていて、今後多くのユーザーをひきつけるためのキラーな技術にはならないだろうと思っています。DIが悪いってわけではないですよ。DIもいいところはあり、それなりに広まったので、これ以上右肩上がりにユーザーをひきつけることはできないだろうということです。


もし、DIがユーザーを今後もひきつけるようなキラーな技術だったとしたら、Java以外の言語でも広く使われているはずです。現実はどうかというと、Java以外では余り人気はありません。これは、昔のEJBは、余りにもだめすぎたので、EJBの代替としてのDIは意味があったけど、DIそのものがキラーな技術ではないということです。
Railsは、キラーな技術(考え方)です。だからこそ、Railsの考え方は、いろんな言語のフレームワークに影響を与えました。Seasar2Railsの影響をかなり受けています。キラーな技術は、言語を超えて広まるものなのです。


なので、SpringはDIをコアとして成長し続けるのは難しいだろうと予想しています。また、海外では、Springのシェアは50%あるとのことなので、これ以上成長するのは難しいんじゃないかな。もう十分にシェアとってるし。後はこのシェアをビジネスに結びつけることができるかどうかでしょう。


それでは、日本のJava界がこの買収劇でどういう影響を受けるかというとあんまり影響はないんじゃないかと思います。日本では、Seasar2が有力ですが、Seasar2のユーザーは、DIがあるからSeasar2を選んだという人は、ごく少数で、SAStrutsを使うためにSeasar2を使っているという人がかなり多いんじゃないかと思います。
日本ではDIよりも、Better Strutsということが意味を持つわけです。
だから、例えば、VMwareの日本法人がSpringのサポートを始めたとしても、それがきっかけでSpringを使ってみようという人は少ないと思いますよ。DI自体は人気ないから。


プライベートクラウドで、VMwareが勝ち残れば、この買収は成功ですね。プライベートクラウドは、超たくさんサイトを持っているようなところでは意味があるけど、そうじゃないところは、パブリッククラウドか現状維持じゃないかなと予想しています。
だから、プライベートクラウドがあんまり儲かる気がしない。先のことはわからないけどね。