ひがやすを技術ブログ

電通国際情報サービスのプログラマ

2011年のPaaSはAmazonの独り勝ちか?

AmazonからBeanstalkが発表されました。
http://aws.typepad.com/aws_japan/2011/01/introducing-amazon-beanstalk.html
Beanstalkを間違っているけど、分かりやすく例えると制限のないAppEngineのようなものです。


GoogleからはApp Engine for Business(4Bと省略)、SalesforceからはVMforceが登場し、2011年のPaaSは、これらの技術の戦いになるでしょう。


どの技術が勝つのか予想する前に、PaaSには、二つの分野が存在することを理解しておきましょう。ソーシャル系などのスケールアウトが必要な分野とそれ以外です。
それぞれの分野で必要とされるものが違うので、分野ごとに勝者を予想する必要があります。


スケールアウトを必要としない分野で求められるのは、制限の無さ、安さ、生産性の高さです。これまで動いていたものがそのまま動く、今までの知識をそのまま生かせることが重要です。


AWS Beanstalkは基本、EC2を中心とする既存のAWSのサービスを使いやすくまとめたものなので、特に制限はなく、これまで動いていたものはそのまま動くでしょう。warファイルをアップロードするだけなので、これまで必要とされていたようなAWSについての深い知識はいりません(とはいえ、チームにAWSについてちゃんと知っている人がいないといざという時に対応できないので、AWSについて知らなくてもいいわけではないと思いますが)。


Google App Engine 4Bについては、SQL Service(AWSのRDSのようなもの)が利用できるので、SQLに関する制限は大幅に緩和されますが、App Serverに関しては、既存のApp Engineと同じもの(VMではなく、Sandboxモデル)が使われると思う(予想が外れたらごめんなさい)ので、ある程度の制限は残るでしょう。


VMforceについては、App Serverはたぶんtc Serverかdm Serverだと思うので、特に制限はないと思うけど、データベースがforce.comのものを基本(force.com以外のDBを使う場合は、それなりにインストールとか必要だと思うのでPaaSではない)使うことになると思うので、それなりの制限を受けることでしょう。
後、値段についてはVMforceとBeanstalkはまだ発表されていないと思うけど、普通に考えるとAWSやApp Engine 4Bのほうが安く提供されるはず。
force.comはSalesforceのもう一つのPaaSですが、生産性が高いことで知られていて、多少高くても短期間で作りたいような案件には向いています。ただ、そのような案件は、それほどなく、ニッチな分野での利用にとどまると思われます。


Azureはオンプレミスとクラウドのスムーズな連携が売りですが、そんな事を要求されるのはまだまだ少数派でしょう。


まとめると、スケールアウトを必要としない分野で勝つのは、制限がなく、(たぶん)安いBeanstalkでしょう。App Engine 4BとVMforceは勝っている部分が(今ある情報だけだと)見つからない。force.comは多少高くても短期間で作りたいようなニッチな分野では、勢力を保ち続けるでしょう。
Azureには、MS信者が付いているので、オンプレミスのMS案件ユーザーがクラウドを選択するときの第一選択肢だと思いますが、それ以外の案件から流れこむことはないと思います。


つまり、Beanstalkの独り勝ち。


もう少し、深く考察すると、App Engine 4Bは、SpringSource(VMware)との提携が話題になりましたが、SpringSourceが関わっている二つのPaaSが2011年は、苦戦するだろうということです。
VMforceとBeanstalkで使われるフレームワークは、Springが多いはずなので、サポートやコンサルを提供している既存のビジネスにはなんの問題もないと思いますが、次の成長分野になる予定のPaaSの部分は、苦しいのではないでしょうか。


次にスケールアウトを必要とする分野においては、AWSからApp Engineへのシフトが進むでしょう。理由は、安くてスケールアウトするから。
mixiクリスマス2010で証明した、一週間で200万人のユーザーが参加してもびくともしないスケールアウト能力。AWSとApp Engineをどちらも使った人によるコストは一桁下がるという話。
AWSのRDSは素だとスケールアウトしないので、シャーディングなり、アプリでかなりがんばらないといけないので、スケールアウトを必要とする分野に、AWS(Beanstalkを含む)はもともと向いていません。
こんなにApp Engineが有利なのに、なぜ利用が進まなかったかといえば、App Engineが成熟したのは、つい最近だから。これまでは、いろいろ問題あったしね。
でも、今は成熟していい感じで使えると思います。
GoogleにロックインされてまでApp Engineを使って、スケールアウトを求めるのは、どうなんだろうというトラックバックあったけど、思考パターンがソーシャル系ビジネスには向いてないと思います。
だって、一年経って目が出ないサービスはやめちゃうだろうし、運よく成功したら、売ってもいいし、さらに続けてより高く売ることを目指してもいい。短いスパンのビジネスだから、ロックインされているデメリットって余り無いもの。